懐疑の弱い土壌に、
憶見は深く根を張る。
そうして根付いた億見は、時が経つにつれ、やがて巨木の様に大きく強固になった。
人々はその影の下に集まり、みな肩を寄せ合い安堵している。
だが智者はそこに立ち入らない。
それらは正しさに欠けた不安定なものであると見抜いているからだ。
古代ギリシャのある智者は、
論理という薬を用い、眼前で巨木を消し去ってみせた。
彼らを
憶見から解き放とうとしたのだ。
だが安住する拠り所を無くした彼らは、恥をかかされた腹いせにその智者を殺した。
こうして人々は皆、また巨木の影に身を寄せ集め、死ぬまでそこで過ごし続ける。
その光景は古代も現代も何ひとつ変わっていないのであった。